私たちの想い

夢のマイホームづくり

家づくりにはいくつかの解決しなければならない問題があります。

資金の問題。建築費がいくらかかるのか。諸費用がどのくらい必要なのか。住宅ローンで借りれば返済は月々いくらになるのか。節税対策は?敷地の問題。住み替え、建て替え。 そして誰に建ててもらうのか。

ハウスメーカーや工務店、設計事務所に依頼する場合もあるでしょう。いくつかの選択肢があります。

ハウスメーカーと工務店の違いは何でしょうか。
ハウスメーカーは会社の規模が大きく、商品の開発力に優れています。営業マンも洗練されています。情報力、信用力も圧倒的です。

地域の工務店は希弱です。人材も豊富ではありません。
しかし断然違うのはものづくりに対する考え方です。

実際ハウスメーカーの家も、建てているのは地域の工務店です。地域の工務店がいなければ家は建ちません。
しかし、工務店がハウスメーカーと同じような家づくりを目指しても、かなうわけがありません。
ハウスメーカー同士が熾烈な競争の中で商品開発しています。そして家を売るための努力、かける人材や、広告宣伝。最先端の新建材を工務店が仕入れて家を建てたとしても、せいぜいハウスメーカーの使う広告宣伝費や、人件費を削った分少し安くできるのが関の山でしょう。
普通に考えれば、規模の異なるハウスメーカーに、地域の工務店が勝てるはずはないのです。
ハウスメーカーを持ち上げるようですが、実際そういうものなのです。
また鉄筋コンクリートや鉄骨造、ツーバイフォーなど多くの選択肢がある中で、何故我々が改めて伝統的な木造の住宅づくりにこだわって取り組むのか。 それは一言でいうと時代が変わり、ハウスメーカーでは対応できないことがあるからです。


豊かな住宅の時代へ

戦後70年がたち、物質的に豊かな時代に育った人達が中心の社会になってきました。
住宅戸数は世帯数を超え、量的には満たされた一方で、質が求められるようになり、雨露をしのぐだけではない、日々の暮らしを愉しむ空間が必要となってきました。

一方で、核家族化も進み、世帯ごとに自分の家を持つようになり、家族関係も変わってきました。そして少子高齢化により、平均世帯人数は2.5人、単身者世帯が一般世帯の3割と、最も多くなりました。

豊かな社会は個人主義を育みました。物の豊かな社会は一見他人の手助けなしでも生きていけるように思えるからです。

しかし新たな現象が社会問題化されてきています。

「家を建てて家庭を失う」という話があります。

日本人が貧しくて大家族で生活していた時代、ふすまで仕切られた畳の部屋に親と子供が一緒に寝ていました。家は寒くて居間には堀こたつがあり、家族は当たり前のようにその部屋に集まっていました。
お父さんが一家の担い手で、みんながお父さんの帰りを待っていました。
時々ケーキや果物など、お土産を買って帰って来るお父さんはまさに英雄でした。
生活が豊かになって新しい家を建てることになり、それぞれに個室が与えられるようになりました。テレビは各部屋にあります。エアコンはそれぞれの部屋を夏でも冬でも快適な温度に保ってくれます。洗濯機は洗濯物を放り込んでおけば、夜の間に乾燥までしてくれます。
生活費はかさみますが家庭の仕事が省力化され、奥さんが外で働きやすくなりました。
家族がみんなで集まる団らんの時間はほとんどなくなり、子供たちは自分の部屋でテレビゲームに講じ、いつ出かけたのか、いつ帰ってきたのかわからないくらいです。
いつの間にかお父さんは、一家にとって尊敬される存在から、粗大ゴミとまで言われるようになりました。
こうなると笑い事ではすまされません。豊かな生活を夢見て建てたマイホームですが、一体どうなってしまったのでしょう。本当に笑い事ではないのです。

最近、私達彩工房に来られるご家族にも、こういった社会の仕組みに問題意識をもっておられる方が増えました。
豊かな暮らしためのどのような住宅を建てていけばよいのか、家族の語らいをどう考えるのか、子供たちの成長に合わせた部屋の使い方はどうすればいいのか、自然素材はどのように使うのか、省エネルギーはどう考えるべきか…などなど。様々な問題意識の中で、実によく勉強されています。

住宅は単に部屋数や広さだけではなくて、心の豊かな暮らしが営まれる空間を提案しなければなりません。
家族が仲良く快適に過ごせて、一家団らんの中で感性の豊かな子供が育つようにするにはそれなりの工夫が必要です。
ものが豊かになればそれに見合って心も豊かにならなければ意味がありません。気づかい、心づかい、言葉づかい、が大切です。
彩工房では、お客様の暮らしについて細かくヒアリングを重ね、住まい手のライフスタイルに合わせたデザイン、計画を行うことで、より暮らしを愉しむことができるような、オーダーメイドの家づくりを目指しています。


廃棄物への関心と現代の家づくりへの違和感

建設リサイクル法の施行などにより、建設業者に廃棄物の分別や適正処理を遵守するための環境が整ってきました。
しかし鉄筋コンクリート造などの建物から発生する廃棄物の再利用化率が向上してきた中、木造建築のリサイクル率が最も低いことを知らされました。
究極的にはごみを出さず、自然に還る木材利用ができないものかと考え、検討した結果、木材をできるだけ無垢材のまま使うという答えにたどり着きました。
今や住宅は車や家電製品などと同様に工業製品として扱われ、ビニールクロスやプラスチックなどに包まれ、少しのキズも許されないクレーム対策産業になっています。
従って、時間の経過とともに反ったり割れたりする無垢の木は、鉄骨はもとより、合板や集成材などと比較しても、クレームを引き起こすばかりの問題の多い建材となってしまいました。

住宅はクレーム産業であるといわれています。せっかくできあがった住宅の建具の立て付けが悪かったり、特に国産の無垢材を使った住宅の場合、梁材に割れが入ったり、ひねりがでて壁に隙が空いたりしたら大変です。
ようやく竣工した住まいが喜んで貰えるどころか、いきなりクレームでは何もかもぶち壊しです。木造住宅はそういった危険性を多く含んでいるのです。
工場で製品化されたものを現場で組み立てるプレハブ住宅の場合、こうしたことは全て不良品となりクレーム対象です。
ですから、プレハブメーカーは無垢の木を使いたがりません。できたら工場でプラスチック加工された、狂いのない木のようなものの方が扱いやすいのです。

しかしこうした工業化住宅の中で失ったものも大きかったのではないでしょうか。
耐久性やメンテナンスの容易さから、結果として人体に有害な化学物質を多用することになりました。

さらに省エネルギー住宅が標榜され、住宅の断熱性や気密性が高くなった室内は空気の入れ換わりが不十分になり、有害な化学物質がとどまる現象がシックハウス症候群と呼ばれる健康被害を引き起こしてしまいました。
これではせっかく苦労して手に入れた家に安心して暮らすことができません。

このような問題が重なり、最近では住まい手側にも明らかに住宅に対する価値観の変化が起きています。
寸分の狂いもない均質な仕上がりでなくとも、永年暮らすうちに壁や床などの木の風合いの変化を楽しむことができ、本物の良さを肌で感じることができる家。
木が湿気を吸ったり吐いたりして室内を調湿し、熱の伝わりを防ぎ、ヒヤッとせずに温かみが感じられる、安心して深呼吸のできる家せる。そんな家が求められるようになってきました。

ここに地域の工務店が、改めてその腕前を発揮する場面ができてきたのです。
こうして実現したのが、国産無垢材や天然素材にパッシブソーラーシステムを組み合わせた、風通しがよく、太陽光に恵まれた、夏涼しく、冬暖かい家づくりです。
また、こうした最終的に自然に還る、天然の素材を使用することは、ごみを少なくします。結局のところ、現代の環境問題は、家のつくり手の姿勢や生産体制により引き起こされているものです。

廃棄物問題と、住まい手の健康問題は根底ではつながっており、別々に議論できるものではありません。

 

地域の職人の手でつくる

最近はよく家を買うといいますが、私達はあくまでも家は建てるものだと考えています。
そこにはそれぞれの家庭の営みがあり、住む人とその土地の気候風土に応じた個性が大切にされなければなりません。
家を新築することは家庭の一大事であり、家族にとっての歴史的イベントです。設計者や大工さん、左官屋さんや、設備屋さんの知恵と汗の結晶が形となって家はできあがっていくのです。
勿論お客様もその一員であり、家づくりにできる限り参加してもらう。できれば植林や伐採現場にも!そうすれば世界で一番大切にしたい家ができあがると考えています。

家が工業化したことで、工場であらかじめ切断され、パッケージとなった部材は、建築現場で誰でも簡単に組み立てられるようになりました。こうした家が増えることで、日本の職人の技術が失われつつあります。
大工さんだけでなく、山で森を育てる職人、そうした材を伐り出し選別し、製材する職人、建具職人など、木の特性を活かした仕事。そうした職人さんたちの知識と経験を活かし、愛着の持てる仕事を残していくことで、貴重な木造住宅の文化を次の世代に伝えていきたいと考えています。

全国で一律に同じ商品を提供する体制を持つハウスメーカーとは異なり、地域固有の職人と技術、そして素材で、地域の気候に適した家を提案します。
生半可な知識では扱いにくい無垢材という素材を、職人の高度な技術により一本一本性質を見極め、特性を十二分に活かした、強くて美しい家づくり。
また家づくりのあらゆる工程で様々な要所を押さえていくことで、本物の素材と技術を納得いく価格で提供できるように挑戦しています。


日本の森を育てる

ほんの数十年前まで日本人は、自分の子どもや孫が家を建てられるように、家の周囲に木を植えてきました。
近くの大工さんに頼んで家を建てる時代から、多くのメーカーから選んで家を買う時代へと移り、住宅そのものも商品化・工業化しました。その結果、家の材料である木も、安く早く大量に同一規格品を揃えるため、海外からの輸入品に頼るようになりました。
そして現在、家のすぐ近くに木があるのに、地球の反対側から持ってくるという、なんとも不思議な状況になっています。

大量生産大量消費でコストダウンをするために、木材の継手や仕口を工場で自動的に加工する「プレカット」には、一本一本特性の異なる国産材は不向きで、ほとんどが輸入木材あるいは集成材です。 鉄筋コンクリートの住宅、輸入住宅や、海外の輸入建材でつくる住宅の影で、国産材でつくる住宅は好まれなくなっていったのです。

その間に遅れを取った国産材の流通システムは旧態依然として、一定の品質の材を限られた時間の中で一定量確保することが困難です。
気候に恵まれ、日本では国土の約7割が森林で覆われており、その約4割が、住宅などに使うために植えられた人工林です。これらの森は、もはや手入れを放棄され、よくても税金を使って伐採し、そのまま山に切り捨てておく、という悲しい状態になっています。手入れが行き届かずに森は荒廃し、日本の林業は低迷しています。

良質で安全な地域の材を手に入れて家をつくるためには、まず木を育む森について知る必要があります。森林関係者と対話し、自ら森と家とをつなぐ道を切り開いていく必要性を感じ、少しずつ地域のネットワークを構築して参りました。
戦後植えられてきた木は、家を建てるには丁度よい大きさに育ってきました。しかし放っておかれっぱなしの山は、山崩れや水害を引き起こしており、生態系にも悪影響を及ぼすことになりかねません。
本当は50年育った木で家を建てて、その家が50年使われれば、植林された木が50年育っているという生命循環が繰り返され、再生可能資源として活用することができます。

国産材を使って住宅を建てることは、山の環境を守る意味でも大切なことですが、これは大手ハウスメーカーには取り組みにくい課題です。
というのは、既に大金を掛けて設備投資したプレカット工場や機械設備には国産材が向かないのと、今さら接着剤を使っているからといって、合板や新建材を排除することができないからです。
また、分業の進んだ営業態勢では十分に木の良さを説明したり、また逆に木の持つ欠点を説明して、クレームのでない理解を得ることが難しいからです。
彩工房では、地域の木材で家をつくっています。それは、最も優れた性能を持ち、人の暮らす環境に最も適した素材だと考えるからです。
また地域の木を使うことで、地域で雇用が生まれ、地域の森が再び元気になります。こうした循環を作り出し、人も社会も持続的なものとしていくことが、私たちの使命です。
地域の資源と自然のエネルギーを活用して、ごみを極力出さず、感性を育み、健康で、安全安心な美しい家、そして社会を実現していくために、私たちは挑戦していきます。